これは参った。だって木造の教室がない。現代86歳の主人公が当時を振り返ると、まず出てくるのがこのシーンで、かなり印象強く表現したいんだけど、無い。指宿市内をまわってあきらめかけたところへ思いついたのが幼稚園。これならスタジオみたいな今の高校や中学の音楽室と違い、まだまだぬくもりがある。それで親しくさせて貰ってるコスモス幼稚園の池水氏に頼むと二つ返事。なんとかなりました。でも予定している、滝廉太郎の「花」の著作権がまだ不明。
それから衣装。この問題があって「砂の道の向こう」は撮影が不可能だと思い、断念しかかってたんだけど、みんなで頑張ってなんとか揃い始めました。なんといっても舞台が昭和18年〜20年、今の服装と全く違う。運良く近所に指宿高等女学校卒の方がいらっしゃって、当時の女子高生の服装、先生の服装がネックでしたが、当時の写真まで手に入り、検討することができました。それによると生徒はセーラー服、だが、あんまり揃ってないから何でもいいやと夏は白いブラウス、先生は着物に袴、それに草履、なんとカッコ良い!!
それに往時の女子校の先生でかなり美人も発見、きりっとした知的な方です。こりゃあ、もうアニメおたくの世界かな。
そして、婚礼。これが困った。参列者の服装も美容室の、これまた指宿高等女学校卒の先生が偶然いらっしゃって当時の事をいろいろ教えていただきました。男性はもちろん羽織袴。女性は着物、これは留め袖、花嫁は黒い振り袖に角隠し、そして三三九度をするのは12歳〜13歳の女の子だったそうです。それらを全部再現することにしました。指宿海上ホテルの松崎さんも乗ってきて、当時はやっぱり黒ジョカだよ、黒ジョカを出そう、とか金屏風は今風、このホテルに伝わる京都で作った屏風があるからそれを出そう、と言い出す始末。そしてやはり、花嫁は生まれ育った実家から媒酌人に連れられて嫁ぎ先へ。これもまたやっちゃうんです。そのために何回もロケハン。これは鹿児島弁でいう「ゴゾンケ」漢字で書くと、たぶん「御前迎え」高貴な方をお迎えする、と言う意味じゃないかと思います。鯛の魚ももちろん用意します。いやあ、楽しみ、そして怖い!
今まで2本、厳密にいうと3本制作して、いろいろな事がわかりました。それはもう筆舌に尽くせないほどの事です。
例えばムービープロジェクトの映画は映像は良いんだけど、音が良くない、騒々しい、大きくなったり、小さくなったりする、役者の演技が一様でない、オーバーな演技、素人っぽすぎる、声が出てない、声が大きすぎる、風の音がマイクに当たってぼーぼーうるさい、いわゆる環境音が入りすぎる、撮影してるのに他の人がしゃべっててそれが入ってる、季節が不明、時間が不明、ばたばたシーンが変わりすぎる、等々。自分でここまで言っちゃうんだからそれほど酷かった。で、今回はすごいよ。まず、いきなりの撮影はしない、リハーサルを入念に繰り返し、なんと今までの課題だった絵コンテまで描いちゃう。カメリハもその時やっちゃう。入念なロケハン。今回は将来役者希望の方が多いので、気合いの入れ方が違う。それから機材にもお金をかけました。安いやつですけど、本格的です。例えば撮影用カメラのレール(4m50cm)、フィッシングポールと言う手持ちのマイクスタンド(役者の顔近くまでマイクを近づけるやつ)、つり下げようのマイクスタンド(演技者の真上にぶら下げる)、長らく壊れたままになっていた照明用の電球、それから今までもあった照明用の反射板。もう完璧です。そして5日の撮影は「トリオ」でお世話になった鹿児島市のアクターズファクトリー、こちらももちろん撮るので2台カメラです。
やっとやっと、「砂の道の向こう」の制作が始まったことのご報告が出来ます。実はもう随分早くから始まっていました。
プレスリリースをこっそりやって、大々的に報道されて、役者、スタッフ募集ができました。その結果、今回はかなり指宿市外からの応募が目立ちました。遠い方はなんと出水市から!元気な元気な中学生です。他にも霧島市、いちき串木野市、鹿児島市、からやってきました。もちろん我が指宿市からも参加しています。指宿ムービープロジェクトに参加する資格はいかにいぶすきを愛してくれてるか ?にあるんですが、そこは皆さんそれぞれ思い入れがあるようです。おばあちゃんの故郷、両親が指宿出身、家族でよく砂むしにやってくる等々、なので全員採用!!
さあ、本日で「約束」の上映は終わりです。もちろんネット上では見れますが、大きな画面では最後です。
場所は山川文化ホール、17時30分からです。9カ所の公民館での上映会で見つけた不具合はすべて修正しましたので一度見た方も、新たな発見があると思います。皆様おさそいあわせのうえお出でください。
次回作でモノトーンの映像を使うかも知れないので昔の映画を借りてきました。以前、羅生門を見ましたが、何だか古くて演技も、あんまり、って感じでした。ここから以後みんな影響を受けて作ったために古く感じるのだと思います。しかし、赤ひげは違った。光と影が作る造形美は話の筋を際立たせ、ぐいぐい引き込んで離しません。暗闇に光る二木てるみ演ずる薄幸な少女の眼は、猜疑心の固まりのような彼女の心を良く表現していたし、山崎努演じる将に死んで行こうとしていく職人の顔を浮き立たせる照明、香川京子の狂女と2人切りになった若医師の加山裕三の芝居を凄まじい不気味さで浮き立たせる照明。どこを見てもものすごい計算のもとに作られているのが良くわかりました。笑えたのは確か森田監督だったと思うけど家族の食事シーンで卓を囲まず横並びで食べていたのはここからなんだとわかったことでした。また、その内容のリアルな事、山本周五郎の原作は読んでないけど医学用語が現代に通じるものだったり、複雑に入り組んだシノプシスや人物設定は生々しく悲劇は
また、いかにも哀れで泣けてしまいました。世界中の人が今だにクロサワと言うのがやっとわかるような気がしました。
「砂の道のむこう」柳田 一郎原作
●あらすじ
(現代・田良浜)
老後の柳瀬靖恵は,かつて海軍航空隊基地があった田良岬で過ごすのが日課である。
沖には知林ヶ島が浮かび,干潮の時にできる砂の道を渡る人々を見るのが楽しみである。
しばらく入院していたので,この日は久し振りに浜に来ている。今日も砂の道をたくさんの人が楽しそうに渡って行く。靖恵が大好きな,豊かで平和な指宿の光景である。
子供達の賑やかな声がして,近くの田良浜エコクラブの子供達と指導の環境省のレンジャーや国立公園ボランティアの一団が近づいて来る。久し振りに会った靖恵の姿に,皆が優しく声を掛け,靖恵も楽しく答える。
子供達は,知林ヶ島での貝の観察会と清掃活動に行くと言う。靖恵が激励すると,お土産の約束をして歩いて行く。
遅れてボランティアで靖恵の同級生の中島が走って来る。もつれて転びそうになる中島を靖恵がからかう。靖恵は皆を見送ると,ついうとうとした。
(昭和二十年・指宿高等女学校正門前から)
昭和二十年初夏,女学校の美しく優しい音楽教師であった靖恵は,生徒達の憧れであった。今日も靖恵の帰りを待った二人の生徒から,結婚の噂は本当かと聞かれていた。
三人が正門を出たとき,海軍中尉柳瀬良行が声を掛けてきた。靖恵の婚約者であることに気付いた女学生達は,嬉しそうにしかし大騒ぎしながら走って逃げていった。
良行は広島県呉基地の訓練に行く事を告げ,結婚を延期したいと言った。
二人は人目を避け,田良浜の松林を歩いた。砂の道の見える浜で靖恵は良行を叱責した。
厳しい戦局の中戦うのは男達だけではない事,女達も覚悟を持って生きている事,そして何よりも大切な人のために生きたい事,時間は無くても後悔しない事を訴えた。
良行が呉に行く前日,二人の結婚式が質素に,しかし心をこめて執り行われた。
良行は話さなかったが,呉の訓練は,指宿基地の水上偵察機を使っての特攻訓練であった。戦局は終に,海に浮かぶフロートをつけた速度の遅い水上偵察機による特攻作戦まで必要とした。呉から帰り,短い期間の暮らしを終えると,良行は出撃した。出撃前夜,良行は靖恵にまた砂の道で会おうと言った。
指宿海軍航空隊水偵神風特別攻撃隊柳瀬中尉以下四機は,昭和二十年七月三日夜明け前,沖縄周辺海域において敵駆逐艦に遭遇,激烈な対空砲火の中を突入,消息を絶った。
(現代・田良浜)
エコクラブの子どもたちが知林ヶ島から砂の道を渡って帰って来る。高校生達は両手にごみ袋を下げている。しかし,それは中身があまり入ってはいない。小さ子子供達は,靖恵にお土産の貝殻とイカの骨を渡す。
みんながいつも大切にしてくれるからごみも少ないと靖恵が喜ぶと,子ども達が知林ヶ島と周りに広がる国立公園の自然を大切にすると約束する。中島が身体を大事にとねぎらうと,靖恵はあなたもねと笑って答える。
(夕暮れが迫り、指宿の街に灯がともる)
靖恵がそろそろ帰ろうと立ち上がった時,消えていくはずの砂の道を誰かが歩いて来ることに気付く。靖恵が驚きの声を上げる。
良行が,あの日のままの姿で,砂の道を靖恵の方へ歩いて来る。気がつくと,いつの間にか靖恵も若い時の姿に返っている。
決して忘れる事のなかった、愛しい人のりりしい敬礼が目の前にあった。
「靖恵,待たせたね」
「良行さん,あなたはどうして」
「君との大事な約束だからね。会いに来たよ。そうだ,ひとつ聞いていいだろうか」
「ええ,何をですか」
「私は君達を守れたのだろうか」
「良行さん,あなた達は立派でした。見て,指宿の町はこんなにも明るくて,美しくて,平和よ。子供達も大人達もみんな元気よ。みんなあなた達を忘れないわ」
「それを聞いて安心したよ。良い国になったんだね。さあ行こう。砂の道のむこうで,みんなが待っているよ」
柳瀬靖恵は,大好きな浜辺で八十三年の生涯を終えた。遠くで鈴の音が聞こえていた。
次回作の制作を発表します。
次回作「砂の道の向こう」(柳田一郎原作)を前作「約束」のスタッフで、役者でも参加した上野智恵の監督により制作します。
プレスリリース(記者発表)は3月23日月曜日午後6時から、指宿中央公民館講堂で行います。
募集内容
主演女優(20歳〜25歳)、主演男優(23歳〜28歳)、子役;男児(3歳前後)男女各5名(10歳前後)、女子10名(15歳〜20歳)、男子5名(17歳〜20歳前後)、30代男女各5名、40代男女各、80代女性、80代男性、生後1年以内の幼児、エキストラ男女数名
「砂の道の向こう」の内容、あらすじについては指宿ムービープロジェクトのホームページでご覧ください。
オーディションでは、応募される方を全員採用とし、落選はありません。オーディションでは主演、助演、その他キャスティングのみ決定します。
キャスティング内にお願いしなかった方はエキストラでの参加をお願いします。
審査内容は、表現力、演技力、表情、発声(声の透過力)、協調性で決定させて頂きます。
スタッフも募集します。
スタッフは、監督助手(ADと呼ばれている方)、撮影スタッフ、音響スタッフ、美術スタッフ、ロケーション時のサポートスタッフ(食事・搬送)、事務局等・庶務。
主題歌の作曲、作詞、歌唱、演奏の募集もいたします。今までに作った曲、演奏があればテープかCD,MDでお持ちください。現場で歌唱、演奏して頂く場合もあります。
演技、スタッフとも演劇経験のある方は特にお待ちします。
オーディションは、4月19日、指宿中央公民館講堂で、午前9時受付開始、10時オーディション開始です。応募される方は必ずメールアドレスか住所を記載したものをご用意ください。未成年の方、もしくはメールアドレスをお持ちでない方は、代理の方が受け取れるアドレスをご準備ください。各種連絡をする際必要です。
オーディションは午前中に終了する予定です。配役の決定は4月26日、通知はメール、または郵送で行います。
クランクインは5月に入ってから、役者、スタッフの都合の良い時間を相談の上、設定して、2日間のリハーサルを経て撮影に入ります(クランクイン)。撮影は参加者の都合スケジュールを考慮しながら計画されますが、5月〜7月までかかる予定です(メインのシーンは5月内に撮影を終わらせる予定です)。参加はボランティアにより行いますが、交通費等、実費は事務局から用意します。食事は昼間のみこちらで準備します。カレーライス等、全員で食べられるものを用意します(予算の都合で米のみの持参をお願いしています)。
その他
指宿ムービープロジェクトは、指宿の自然、文化、歴史、イベント等をたくさんの切り口で、市内外に紹介することを目的に活動しています。また、指宿の文化の浮揚、映画作りを通しての青少年の健全な育成、彼らの可能性を育むための容器作り、と多様なものです。 2006年に映画作りを始め、昨年は県内、或いは中央からの、映画作りのプロの方々の力を借りて実験作品を作りました。これは撮影、制作、俳優と多種にわたり、指宿ムービープロジェクトの高校生、中学生は実際に参加し、今まで知らなかった事を実際にドラマを作りながら教えて頂きました。この際にはまだ事業からは予算が下りていなかったので、我々でなんとか工面しましたが、大変苦しいものでした。これにより、若いスタッフは中央のドラマ作りを職業としている方々の仕事ぶりをつぶさに見ることが出来て非常に有意義でした。
映画制作には多額のお金がかかります。指宿市、指宿市観光協会、諸々の企業、個人の方々に毎回ご協力を頂いて活動しています。指宿ムービープロジェクトは、活動自体で収入を得られるよう努力していますが、まだ目的は果たせていません。ここでお願いですが、指宿ムービープロジェクトに協賛してくださる、企業、個人の方を募っています。金額の多少は問いません。協賛してくださった、企業、個人のお名前は映画のエンドロール、ポスターに掲載させて頂きます。
多額の協賛を頂いた企業については、シナリオに加筆し、映画の中で登場させて頂きます。
さて何から書きましょうか。随分さぼってしまいました。いろいろあったので伝えたいことがたくさんあります。まず、校区公民館の上映会の事をお話ししましょう。
9つの公民館の上映会は宣伝してないので、市民のみなさんに知って貰っていないので見に来てもらえるか心配でした。心配したとおり、まず魚見公民館がこけました。時遊館COCCOはしむれの上映会はマスコミの皆さんの力と、スタッフが懸命に走り回ったおかげで80人前後の方が集まってくれたので、校区公民館の上映会も安心してました。ところが、でした。
それからも、なかなか、難しかったんですが開聞総合体育館のサブアリーナはたくさん来てくださったんです。中には「こんなに良い映画をただで見せて貰って良いんですか?」とおっしゃるお客さんもいました。
他にも、これは昨年も言われたんですが、「こんな良い映画、もっとたくさんの人に見て貰ったらいいのに、宣伝不足ねえ。」とかです。
それで、山川図書館の方が助言くださった、「読書会の時に上映会をしたらどうでしょう?」と言うお話に、ああ、そうだ、と思いました。スタッフもこんな労力を使って、こんなに少ない人間しか来ないなら、考えた方が良いのでは?と言う意見も出ました。それで、次回作は、指宿、山川、開聞の3地区で、時遊館COCCOはしむれ、山川図書館、開聞総合体育館サブアリーナの3箇所でやろうかな、と思っています。で、残すところ、あと3回、指宿、今和泉、4月5日の山川文化会館で最後です。みなさん是非来てくださいね。そう言えば、はしむれで、毎日12時から「トリオ」を上映してますし、方々で今まで創った映画もいろんなところで上映していただいてますし、なんといってもインターネットでも上映してますから、かなりな方が見てくださっていることになります。今後もよろしくお願いします。
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