原作者からの手紙 その6
「水上飛行機(すいじょうひこうき)ってどんな飛行機?」
アニメ「紅の豚(くれないのぶた)」で、主人公のポルコが自由自在にあやつる飛行機が「水上飛行機」です。
飛行機の下に、水に浮かぶための浮舟(ふしゅう、フロートとも言う)を付けた飛行機のことです。海や川や湖など、水のある場所ならどこでも降りたり(着水:ちゃくすい)、飛んだり(離水:りすい)できる便利な飛行機です。
さて、日本海軍は水上飛行機を大事に考えました。中国(ちゅうごく)との戦争で、水上飛行機が敵の戦闘機(せんとうき)を戦って落とすという予想以上の活躍をしたからでした。また、レーダー(電波探知機:でんぱたんちき)の無い頃、空から、敵の軍艦(ぐんかん)を見つけたり、大砲(たいほう)の打ち方を指図(さしず)する水上偵察機(すいじょうていさつき)は、軍艦に積んで使う飛行機として開発されてきました。まさに軍艦の「目」となる飛行機でした。
しかも、日本軍が南の島々を占領(せんりょう)するにつれて、飛行場を作る時間や場所が無い場合に、基地(きち)を守ったり偵察(ていさつ)をしたりするには、水上飛行機がとても便利でした。
※ 偵察…敵をさがしたり、敵の様子をさぐること。
指宿海軍航空隊は、南九州の海を守る部隊でした。この基地には、水上飛行機の中でも、「94式水上偵察機(きゅうよんしきすいじょうていさつき)」、「零式三座水上偵察機(れいしきさんざすいじょうていさつき)」、「零式水上観測機(れいしきすいじょうかんそくき)」、「二式大型飛行艇(にしきおおがたひこうてい)」という、4種類の飛行機がありました。
※ 二式大型飛行艇は、二式大艇(にしきたいてい)とも呼ばれ、当時世界最大の飛行艇でした。その「実物」は、鹿屋市にある海上自衛隊鹿屋基地資料館前に展示してあります。
柳瀬海軍中尉は、この中の二人乗り複葉(ふくよう)の偵察機、「零式水上観測機」の操縦士でした。そして、偵察電信員(ていさつでんしんいん)の西牟田一等飛行兵曹(にしむた・いっとうひこうへいそう)とともに「ペア」となって飛行機に乗っていました。二人は、階級(かいきゅう)は中尉の柳瀬が上でしたが、同じ飛行機に乗り生死を一緒にする仲間として、固い信頼で結ばれていました。
※ 複葉…翼が2枚あること。零式水上観測機は、戦闘機の性能を持たせるため、あえて複葉にした水上飛行機でした。
階級…兵隊の位のこと。
映画にはない原作の言葉:「ト号作戦機が発進する。ト号作戦機が発進する。各員は各部署において、これを見送れ― これを見送れ―」
柳田一郎
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