指宿ヨワワ団 THE MOVIE「命のモトは友のアカシ!」西野雄士 入選
指宿ヨワワ団 THE MOVIE「命のモトは友のアカシ!」
指宿の温泉に浸かっている小学6年生のケンタ、スサノオ、ポンチ。彼らが3年前に結成した秘密結社・指宿ヨワワ団の第35回定例会議が始まった。議題は、彼らの中の裏切り者を成敗すること。20年間、開けてはならないという約束で、秘密基地である知林ヶ島に埋めた秘宝「命の素」が、掘り返されてしまったのだ。スサノオとポンチを疑っている団長のケンタは、二人を知林ヶ島へ連れて行く。
知林ヶ島へ向かう浜辺に着いた三人は、今の時期、現れているはずのない砂州が、はっきりと知林ヶ島へ続いている姿を目の当たりにする。ケンタは、全ての物に命を吹き込む「命の素」が砂州へまかれてしまったため、砂州が生命を持ち、長時間存在しているのだと解説する。
知林ヶ島では確かに、命の素を埋めたタイムカプセルが掘り返されていた。やったのは自分ではない、と訴えるスサノオとポンチ。だがケンタは、命の素の恐ろしさを知らない別の人間が盗んだとすれば、大変なことになると嘆く。彼らはかつて、遊び半分で白ご飯に命の素をかけたり、池田湖のアヒルのボートにかけたりして、酷い目にあった経験がある。彼らは、命の素の恐ろしさを知り、封印する事を決めたのだった。
ふと、ポンチが、亡くなったはずの村松のガンコジジイの空き家から、今朝ラジオがなっていたことを思い出す。何者かが、死んだ人間に命の素をかけたのではないかと考えた三人は、ジジイの家に急行する。
廃屋となっている薄暗いジジイの家にこっそりと侵入する3人。恐る恐る中の様子を探っていくが、人の気配はない。すると突然ラジオが爆音で鳴り出す。びびって逃げ出すケンタとポンチであったが、冷静なスサノオが、ジジイが生き返ったのではなく、ラジオに命の素が振りかけられたのだと、分析する。ラジオに命の素をかけた犯人は、ジジイの孫娘、村松ユリではないかと推測した3人は、ユリがジャズダンスを習っている、指宿菜の花館へ向かう。
巨大かつ奇怪なデザインの菜の花館を見上げ、これにまだ命の素がかけらていないことに安堵する3人。もし、菜の花館が命を持てば、地上を焼き尽くす巨神兵が誕生していたに違いない。
ユリのジャズダンス教室をこっそり覗く3人。鼻の下をのばしているケンタは、どうやらユリに惚れているようだ。ユリを呼び出す為、3人はヨワワ団の秘密兵器、ポンチのびっくりものまね術を使う事に決める。これをやるとお腹を下し、2キロ痩せるからと嫌がる肥満体のポンチであったが、いいダイエットになると二人に押し切られる。
天国の祖父にそっくりな声色を使い、まんまとユリを菜の花館の屋上へ呼び出す事に成功した3人。姿を現さず、祖父のふりをしてユリに問いかける。「最近、知林ヶ島へ行き、何かを見たか?」という問いに、「島には行ったが、誰も見てない」と答えるユリ。その後、ケンタの差し金で、ユリの好きな男子を聞き出そうとするが、ポンチがヘマをし、ユリに正体がばれてしまう。怒りをあらわにするユリだったが、「何かを見たか?」という問に対し、「誰も見てない」と答えた矛盾を突かれ、白状し始める。
知林ヶ島へ、相沢光一という少年と遊びに行って、中年風の男が何かを掘っている様を目撃した。人の気配に気づいた男は慌てて何かを持ち去ったが、その時小さな缶を落としていった。自分達はその後、その小さな缶を持って、祖父の家へ掃除へ行った際、突然、ラジオが鳴り出し怖くなって逃げた、という体験を語るユリ。
さらに、使い捨て用の小さな缶に詰められた「命の素」を現在持っているのが相沢光一であること、「命の素」本体を持ち去った真犯人が別にいて、相沢の父が持っているTシャツと同じ物を着ていたことが分かり、相沢が夏期講習を受けている進学塾へと向かう3人であったが、ユリに男がいることを知ったケンタは一人落ち込んでいた。
相沢の進学塾に潜入する3人。窓から授業を覗いていたが、ものまね術のために腹を下したポンチの絶叫で、講師にばれてしまう。機転を利かせて、授業に参加することに成功した3人だったが、相沢光一は最高特進コースで別の教室、自分達はがんばろうコースであることが分かり、地獄の特訓を受けるはめになる。
肉体派の塾講師に身体を使った暗記法を試され、苦しむケンタ。ちょうどその時、ドアの窓越しに相沢光一が通るのが見える。ケンタに気づいた相沢は、小さな缶を取り出して見せ、笑って立ち去る。すると、別の教室から突然、叫び声とともに多くの生徒が逃げ出してくる。
現場の教室へ急行する3人。教室はめちゃくちゃに荒れ、黒板には「たまには勉強以外のことで身を削りたい」というなぐり書きがあり、宙を舞っていたチョークが床に落下する。どうやら相沢が、教室の道具に命の素をかけたらしい。相沢の危険性を知った3人は、相沢と対峙するため、相沢の家へと向かう。
小学生とは思えない、専門書の数々と電子機器類が納められた部屋に住む相沢光一は、指宿ヨワワ団の到着を待っていた。相沢は、砂州やラジオに命の素をまいたのも自分であり、命の素の秘密も知っていたと告げる。
3年前、開聞岳へ遠足した時、遭難し行方不明になったケンタ・スサノオ・ポンチの三人が、食料も無い中1週間も生き延び、奇跡の生還を遂げた。そのことを不思議に思い続けた相沢は、古文書を調べ、「命の素」と呼ばれる幻の花粉の存在を知る。命の素によって3人は助かったのではないかと推理した相沢は、密かにヨワワ団の活動を追跡していた。そして、踏み荒らされた菜の花を、3人が命の素で蘇らせる様を目撃した相沢は、確信を強めた。さらに相沢は、知林ヶ島で偶然手に入れた少量の命の素を使い、その効果持続時間を計測するまでに研究を進めていた。小さな缶に残っている微量の命の素を悪用するのでは、という疑念を抱いたケンタであったが、相沢は、そんな馬鹿な事はせず、それをもとに研究を進め、世界一の学者になるつもりだと答える。
「命の素」の本体を奪った真犯人を知るべく、相沢の父が所有している、犯人が着ていたものと同様のTシャツを見て、ケンタとスサノオは驚愕する。それは、普段ポンチがよく着ているTシャツだったのだ。いつの間にかその場から消えているポンチを探す為、二人は相沢の家を飛び出す。ポンチの家へ向かう二人だったが、ポンチは命の素を取りに帰った後、再びどこかへ出かけたらしい。夜の指宿へと捜索に出かける二人。
ついに二人は、命の素がつまった大きな缶を懐に抱え、座り込んでいるポンチを、知林ヶ島へ向かう浜辺で発見する。事の真相を問いただす二人だったが、ポンチから返ってきた言葉は驚くべきものであった。3年前、開聞岳で遭難した時、ケンタとスサノオは死んでいたのだと言う。崖から滑り落ちて大怪我をしたポンチは、ぐちゃぐちゃになって死んでいる二人を見て、泣きながら帰り道を探していたところ、偶然、幻の花に出会い、その花粉を使って傷を治し、二人を生き返らせた。ポンチは今までそのことを秘密にしてきたのだった。しかし、二人に与えた命の素の効果が3年を経て切れようとしている今、命の素を封印してしまえば、二人は死人に戻ってしまう。そのため、ポンチは命の素を掘り返し、二人に再度与えるつもりだったのだ。最初は信じなかった二人だが、死への兆候が自分の身体に現れ始めていることが分かり、ポンチの話に納得する。ポンチに苦しい思いをさせてきたことを謝り、今ある命の素の残量から、生き延びられる時間を計算するが、それは残り20年であることが判明する。その中途半端さに苦笑いする3人だったが、それまでには再度幻の花を見つけることを誓い、相沢の研究もシャクだけど頼りにしよう、という話をする。中年になっても一緒に温泉に入ろうと宣言した3人は、命の素を舞い散らせる。夜明けの空にきらめく命の素を浴びるケンタとスサノオ。知林ヶ島の向こうからはまばゆい朝日が現れる。「指宿ヨワワ団万歳!!」 THE END
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