原作者からの手紙その5
柳瀬海軍中尉はどんな人?」
靖恵さんの夫・柳瀬直行海軍中尉(やなせなおゆき・かいぐんちゅうい)は、指宿海軍航空隊の操縦士(そうじゅうし)です。もちろん架空の人物です。しかし、原作を書くにあたって、次のように考えました。
指宿市今和泉(いまいずみ)出身、靖恵の幼馴染み(おさななじみ)、近所の「直(なお)にいちゃん」でした。
今和泉小学校から、第二鹿児島中学校を卒業(原作者の高校の先輩になります)、海軍兵学校(かいぐんへいがっこう)へ進み海軍士官(かいぐんしかん)への道を歩き、長崎県の大村海軍航空隊(おおむらかいぐんこうくうたい)に勤務しました。
昭和18年、指宿出身であったことから指宿基地建設の応援を命じられ、以後そのまま指宿基地勤務となりました。
直行は、兵学校の合格祝いの日、靖恵にだけ本当の気持ちを語ります。
兄弟が多かった直行は、家族の暮らしのことを考えて、軍人の道を選びました。しかし、本当は、高等学校から帝国大学(ていこくだいがく)に進学し文学を勉強したいという気持ちがありました。新聞や雑誌の仕事をしたかったのです。この気持ちを我慢して、難関と言われた海軍兵学校に合格しました。直行の部屋には、受験勉強の合間に読んだ「岩波文庫(いわなみぶんこ)」がたくさん並んでいました。
そして、合格祝いの日、靖恵は直行にその文庫を読ませて欲しいとねだり、直行をからかいながらもその気持ちを確かめます。(鑑賞の手引き2の言葉)
「軍人(ぐんじん)」というのは、とても怖い人たちと思われるかもしれません。しかし、昔も今も、普通の優しい父や兄や夫達です。世界中のそんな優しい男達が人を殺す道具になっていく・・・なぜでしょう?この映画をきっかけに、みなさんんも考えてみてください。
映画にはない原作の言葉:「鯉(こい)を食べると元気が出ると言うが、これ以上元気になると飛行機より先に飛び出すかもしれないね」
柳田一郎
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