トリオ;最終決定稿
○マンション 一室
晴れ渡った空の元、白い洗濯物が翻る。
典型的な幸せな家庭の午後の風景。
白いシーツや子供の服を干す若い主婦。
歳は30前半。
その絵からカメラが動き、縁側かサンルームに2人の子供がアルバムを見
ている。
女の子は小学校低学年、男の子は年長組くらい。
男の子「あっ、お母さんだ」
女の子「ほんとだ」
男の子「お母さーん、お母さんと一緒に写ってるこの人たちだーれ」
母、洗濯物を干す手を休め、子供たちのところに歩く。
母親「その人はお母さんの大親友、とても大事な人だったの」
女の子「ふ~ん、この人も?」
ふざけて写っている徹。
母「うん・・・・(少し時間を置いて)」
母は2人を見て、空をゆっくり見上げる。
雲が写り、空は雲の形を重ねながら降りてくる。
カメラは降りて来て、ある学校へ降り、教室へと移る。
ディゾルブ。
タイトルバックとテーマ音楽
○教室
教壇に立つ修一と徹。
二人の漫才をクラスの中が見ている。
徹が教師の物まねをしている。
修一が、その教師に怒られている生徒の物まねをする。
大爆笑のクラスメート。
その中の麗美。
笑っている。
先生の声「はい、そこまで。おふざけはおしまい」
先生が入ってきて、修一と徹をたしなめる。
クラスメートも三々五々に席に着く。
先生「徹、放課後、職員室に来い」
徹「えっ、俺だけ?」
先生は、徹の問いを無視して、教科書を開く。
麗美が声を潜めて、
麗美「徹、何やったの?」
徹「さあ?」
修一「ドジ」
授業を受ける修一、徹、麗美。
麗美の声「修一と徹と私は、幼稚園からの幼なじみ。高校生になった今でも、不思議なくらい仲がいい」
○校庭 放課後
クラブ活動が始まっている。
○職員室
先生の前に立っている徹。
先生「本当に就職でいいのか?」
頷く徹。
先生「親御さんも、当然知ってるんだよな」
徹「・・・はい」
先生「ず~と、進学って言ってたから、驚いたんだよ」
徹「・・・」
○校舎 片隅
待っている修一と麗美。
通りかかる女友達雪絵、洋子、愛。
雪絵「レミ、帰らないの?」
麗美「徹を待ってるの」
洋子「バイバイ」
麗実「バイバイ」
校舎から出てきた徹。
修一と麗美に気づいて近づいていく。
女友達とすれ違う徹。
女友達の会話が耳に入る。
愛「あの二人、ホントにお似合いよね」
雪絵「学校中のあこがれの人が恋人か、うらやましいなぁ」
立ち止まる徹。
その会話が、修一と麗美の事だと気づく。
徹「・・・」
修一の声「おそい、徹」
我に返る徹。
手を振る修一と麗美。
いつもの笑顔になる徹。
○路
ふざけ合いながら帰る三人。
麗美の声「楽しい時間が、永遠に続けばいいと思っていた・・・」
夕日に映える三人のシルエット。
○メインタイトル
「トリオ」
○コンビニ レジ近く (夜)
徹が店長らしき人と話している。
無理だという風に断られている。
○修一の家 外観 (夜)
○ 〃 居間 (夜)
ゲームに夢中の修一。
夕食の後かたづけの母親。
母親「とても受験生の生活態度とは思えないわね」
無視している修一。
母親「東大でも大丈夫だって先生のお墨付きだから、心配はしてないけど・・・勉強している振りでもいいから、やってくれない」
無視している修一。
母親「そうそう、映画のチケットが手に入ったんだけど、行く?」
その言葉に初めて反応する修一。
修一「何の映画?」
母親「さあ、その袋に入ってるから見てみたら」
いそいそと封筒を開ける修一。
修一「すげぇ、スピルバーグじゃん」
母親「徹君や麗美ちゃんと行ってきたら?」
修一「やったー」
○麗美の部屋 (夜)
風呂上がりの麗美。
携帯メールに気づく。
携帯画面。
「勉強にも飽きただろ。明日、みんなで映画に行かない?」修一
○大山甚七商店 (夜)
店主と話している徹。
店主「じゃあ、明日から頼むよ」
徹「よろしくお願いします」
○ 〃 表 (夜)
出てくる徹。
メールが来る。
携帯を開ける徹。
「明日、みんなで映画に行かない?レミは行くって」修一
徹「・・・」
×××
フラッシュ
校庭で徹を待っている修一と麗美。
女友達の声「あの二人、ホントにお似合いよね」
×××
徹「・・・」
携帯をしまうと、夜の闇の中に消えていく徹。
○指宿市街
朝の風景
○指宿駅前
待っている修一と麗美。
修一にメールが来る。
修一「徹だ、なにやってんだよまったく」
メールを開く修一。
修一「風邪で高熱出して行けなくなったって・・・」
麗美「(心配顔)大丈夫かな」
修一「どうする」
麗美「・・・仕方ないから二人で行く?」
修一「そうだな、チケットもったいないし」
麗美「・・・」
○鹿児島市内 映画館前
看板の前にたたずむ修一と麗美。
帰りの列車の中の二人。
麗美の声「映画は面白かったけど、なんだか白いご飯に味のないふりかけをかけて食べたような、よくわからない一日だった・・・」
○学校 校門 (朝)
生徒たちが登校してくる。
○ 〃 教室
入ってくる徹。
駆け寄る麗美と修一。
麗美「徹、大丈夫なの」
修一はすぐに徹の額に手を当てる。
修一「熱ちっ!」
苦笑する徹。
徹「なんでもないよ」
修一「おまえは身体が資本なんだから、大事にしろよ」
女の子二人が修一に近づく。
女の子A「修一さん、あの・・・お話があるんだけど」
修一「?」
女の子B「ちょっといいですか」
修一を廊下に引っ張っていく女の子たち。
麗美「・・・」
徹「・・・」
廊下で別な女の子(初音)から手紙を受け取る修一が見える。
麗美「またラブレター?」
徹「今月、何通目だ?」
麗美「卒業が近いから、焦ってる?」
麗美はあきれ顔。
そんな麗美の表情を盗み見る徹。
徹「・・・」
麗美「(徹に気づいて)どうかした?」
徹「(慌てて)別に」
平然とした顔で帰ってくる修一。
麗美「修一、ちゃんと返事書いてるの?」
修一「まあ、たまに・・・」
麗美「罪作りだね」
修一「(徹に)それより、いいネタ思いついたんだ。今日の夕方ネタ合わせしようぜ」
徹「・・・ごめん、用事があって・・・」
徹の意外な答えに顔を見合わせる修一と麗美。
徹は二人の顔を見ない。
修一・麗美「・・・・」
○ 〃 屋上
徹一人。
ポケットからキーホルダーを出す。
徹「・・・」
×××
子どもの頃の麗美。
キーホルダーを子どもの徹に差し出す。
麗美「これ、徹にだけあげる(声を潜める)修一には内緒だからね」
本当にうれしそうな徹。
×××
徹「・・・」
麗美の声「よっ!」
振り向くと麗美が立っている。
キーホルダーを見えないようにポケットにしまう徹。
麗美「一人で物思い?似合わないね~」
苦笑する徹。
麗美「最近、元気ないんじゃん」
徹「そんなこと無いよ」
麗美「なんでも言いなさいよ。いざという時にこそ頼りになる私だから」
笑ってしまう徹。
麗美「笑っている方がいいよ、徹は」
徹「ああ」
二人で景色を見る。
麗美「いい季節だね」
徹「うん」
風が吹く。
麗美「感謝してるんだ。二人には」
徹「?」
麗美「小学校の3年の時、父が亡くなったでしょ」
徹「うん」
麗美「あのとき、徹と修一が言ってくれたこと」
徹「?」
麗美「これからは俺たちがお父さんだって」
照れ笑いの徹。
麗美「必ず、レミを守るからって」
徹「そんなことまで言った?」
麗美「おかげさまでこんなに太く育ちました(力こぶ)」
笑う徹。
麗美「だからさ、何でも言ってよ力になるからさ」
徹「・・・俺」
麗美「うん」
徹「・・・」
麗美「?」
徹「・・・俺たち、レミを幸せにしなきゃな、約束だもんな」
麗美「・・・うん」
チャイムが鳴る。
徹「行こう」
徹は照れくさいのか、さっさと行ってしまう。
残された麗美。
麗美「・・・俺じゃなくて、俺たちなんだ・・・」
○麗美の家 玄関 (夕方)
麗美が帰ってくる。
奥から、待ちかねたように和子が来る。
和子「あんた、昨日は徹ちゃんたちと映画に行ったんじゃないと?」
麗美「徹は風邪で熱出して行かなかったよ」
和子「なんでね、徹ちゃんは酒屋で働いてたってよ」
麗美「働く?」
和子「雪絵ちゃんのお母さんが見たって」
麗美「?」
和子「それと、噂なんだけど、徹ちゃんのお父さんの会社が倒産したって言うのよ」
麗美「・・・何処の酒屋さん?」
和子「大山商店だって」
麗美「お母さん、鞄お願い!」
麗美は飛び出していく。
○道 (夕方)
急ぎ足で歩く麗美。
歩きながら携帯を出す。
麗美「修一、すぐ来て」
○大山甚七商店 表 (夕方)
店先に立つ麗美。
徹の姿は見えない。
修一がやってくる。
二人して店に入っていく。
○堤防 (夕方)
自転車で配達帰りの徹。
やってくる修一と麗美。
二人に驚く徹。
徹「・・・」
○海辺 (夕方)
修一・徹・麗美
修一「何で俺たちに黙っていたんだよ」
徹「・・・もうどうしようもないんだ」
麗美「進学もあきらめなきゃいけないの?」
徹「・・・」
修一「働きながらでも大学行く方法はあるよ、徹。夜バイトするか、昼間働いて夜学に行くか。それとも奨学金もらうとか」
徹「そんな程度じゃとても足りないらしい。兄貴が来年卒業で、俺まで2人は無理だよ。それに、だいたい俺そんなに頭よくないし、勉強するより働く方が性に合っているみたいだし・・・」
麗美「だって、最近、随分成績も伸びていたじゃない ・・・」
麗美の言葉を遮るように
徹「ま、いいじゃないか。もう決めたんだ」
徹はにっこり笑う
修一・麗美「・・・」
麗美の声「私、小さな頃から徹が我慢している顔は良くわかる・・・」
○学校 廊下
女の子ABが走る。
○ 〃 階段
女の子ABが走る。
その勢いに、周りの生徒も驚く。
○ 〃 修一たちの教室の前
女の子ABが走り込んでくる。
女の子たちは、修一を見つけると、つかみかかっていく。
女の子A「初音に、初音に何をしたの!」
驚く修一。
修一「どうしたの?」
女の子Bは、その場に泣き崩れる。
女の子A「・・・初音が、・・・自分の手首を切ったの」
修一「!」
愕然とする修一。
×××
フラッシュ
廊下で恥ずかしそうに手紙を修一に渡す初音。
×××
修一「・・・」
見守るしかない麗美と徹。
○病院 廊下
立っている修一。
初音の母親が近づく。
修一は、頭を深く下げる。
初音の母「あなたが修一さん?」
修一「はい」
初音の母「初音は、まだ意識が戻らないの・・・」
修一は、初音の母親に向かって土下座する。
初音の母親は、首を横に振って修一を抱え起こす。
初音の母「あなたが悪いんじゃないのよ・・・あの子が、弱いのよ・・・」
修一「・・・」
初音の母「初音は、毎日のようにあなたのことを話してたわ・・・」
なすすべのない修一。
廊下の隅から、修一の姿を見つめる麗美と徹。
○公園
修一・徹・麗美。
麗美「あまり、自分を責めない方がいいよ」
修一「手紙の返事を出さなかった・・・俺がいい気になってたんだ・・・」
徹「修一・・・」
修一「一人にしてくれ」
修一は、二人から離れていく。
残る麗美と徹。
徹「・・・レミ、修一には、おまえが必要なんだ・・・助けてやってくれ」
麗美「徹・・・わたし・・・」
修一とは逆の方向へ離れていく徹。
一人の残される麗美。
○教室
一人でぼんやりとしている修一。
麗美の声「修一は、火が消えたようにおとなしくなった」
○帰り道
徹に追いつく麗美。
麗美「修一を見てると、いたたまれないね・・・」
徹「うん」
麗美「私たちには、何もできないのかな・・・」
徹「・・・いつもみたいに、修一のそばにいてやって」
麗美「・・・」
徹「この前の俺の時みたいに、修一を元気づけてやって」
麗美「・・・徹は?」
徹「・・・レミがそばにいてあげるのが、一番なんだよ」
徹は、すたすた歩く。
麗美「・・・」
麗美の声「・・・徹、違うよ。・・・徹」
○病院 表
修一が入っていく。
○酒屋
働いている徹。
○図書館
勉強している麗美。
何かの思いが、頭をよぎる。
携帯をとりだし、メールを打ち始める。
携帯画面「徹、話があるの・・」
麗美「・・・」
メールを削除する。
○徹の部屋
ベットに寝ころぶ徹。
机の上にはキーホルダー。
それを見つめる徹。
○病院 表
修一が入っていく。
○ 〃 廊下
奥から初音の母親が修一に駆け寄る。
初音の母「初音の意識が戻ったの」
○ 〃 病室
ベットには、初音がいる。
修一と母親が入ってくる。
初音が修一を認識する。
初音の頬を涙が伝う。
初音「(修一に)・・・ごめんなさい、・・・ごねんなさい」
母親が、優しく抱きしめる。
修一「・・・」
○春
○登校風景
徹の背中をたたく麗美。
麗美「おはよう」
徹「おはよう」
麗美「徹、これ見てみて」
鞄の中から封筒を出す。
麗美「通信の大学のこと調べてみたんだ」
驚く徹。
麗美「無理強いじゃなくて、考える材料にならないかなと思って・・・」
徹「・・・レミ」
麗美の目線が止まる。
徹も見る。
登校する生徒たちの間に、修一と初音が見える。
麗美「・・・修一、本当に幸せならいいね・・・」
頷く徹。
そんな麗美の表情を盗み見る徹。
徹「・・・」
麗美「(徹に気づいて)行こうか?」
徹「ああ」
楽しげに登校する修一と初音。
○学校 一角
修一を引っ張ってくる徹。
徹「これ以上、レミを悲しませたら、絶交だからな!」
徹は言い捨てると去っていく。
修一「おい待てよ・・・」
残されたあきれ顔の修一。
○麗美の家 玄関
出かける準備の麗美。
和子「忘れ物無いわね」
麗美「もう、子どもじゃないんだから」
和子「久しぶりじゃないの3人が揃うのは」
麗美「三人だけじゃないけど・・・」
和子「いいじゃない、にぎやかな方が。だけど三郎君の家も大変ね、お別れ会に離れまで提供して」
麗美「お別れ会なんて、なんか気恥ずかしいな・・・」
和子「そんなこといいながら、泣いちゃうんだから」
麗美「まさか、冗談を。行ってきます」
和子「いってらっしゃい」
○森田家 離れ (夕)
数人のクラスメートが集まっている。
麗美もやってくる。
○ 〃 中
すでに席に着いているクラスメートたち。
徹、三郎、雪絵、洋子、愛がいる。
徹を見つけて、となりに座る麗美。
麗美「これだけ?少ないね」
徹「もう、指宿にいない人もいるし」
麗美「修一は?」
徹「来るはずだけど」
人数を数えていた三郎。
三郎「そろそろ始めようか」
修一が入ってくる。
修一「ごめんごめん」
そのあとから、初音が入ってくる。
徹「・・・」
修一たちは、麗美たちとは離れた場所に座る。
徹「・・・」
三郎「とりあえず乾杯しましょう」
乾杯の準備が始まる。
三郎「それでは、乾杯!」
がやがやと雑談が始まる。
×××
修一と初音も楽しそうにしている
徹は修一たちが気になる。
麗美も、何となく気になる。
徹が突然立ち上がり、修一に近づく。
徹「(修一に)ちょっっと来い」
修一「・・・」
麗美「・・・」
麗美も立ち上がろうとする。
しかし、となりの女の子が麗美に話しかけて機を逃す。
○ 〃 表 (夜)
修一を連れ出した徹。
徹「どういうつもりなんだよ!」
修一「何が?」
徹「レミの気持ちを考えたことがあるのか?」
修一「レミの気持ち?」
○ 〃 中 (夜)
宴会は盛り上がっている。
修一と徹が気になる麗美。
初音も同じようだ。
飲み物を取りに行く三郎。
三郎が飲み物をとる、一番端のグラスが倒れる。
こぼれたジュースが垂れていく。
その先には、コンセントがある。
誰もそれに気づかない。
○ 〃 表 (夜)
徹「初音ちゃんだってかわいそうじゃないか」
修一「かわいそう?」
徹「初音ちゃんだって、同情で優しくされたってうれしいわけないじゃん!」
修一「おまえだったら、ほっとくのか?」
○ 〃 中 (夜)
コンセントにジュースが入り込む。
誰も気づかない。
○ 〃 表 (夜)
徹が修一の胸ぐらをつかむ。
修一をにらみつける徹。
修一は、少しずつ笑い出す。
徹「?」
修一「おまえ、何にも分かってないな」
徹「なにが!」
修一「レミの気持ちだよ」
徹「・・・」
修一「おれは、小さいときから知ってたよ」
徹「?」
修一「レミはおまえが好きなんだよ」
そんなわけないという徹の顔。
修一「レミは、いつもおまえを見ていた・・・」
徹「そんなことない」
修一「おまえって、ドジじゃん。徹には、自分がいなきゃダメだと思ってるよ」
徹「・・・」
修一「おまえ、本当に鈍感だな・・・(苦笑)一緒にいれば、すぐにわかるよレミの気持ち」
徹「・・・」
○ 〃 中 (夜)
コンセントがショートしている。
誰も気づかない。
○ 〃 表 (夜)
修一「おまえがレミを幸せにしなきゃいけないだよ」
徹「・・・」
修一「おまえだって、レミの事がスキなんだろ」
徹「・・・(頷く)」
修一「おまえからちゃんと言わないでどうすんだよ、男だろ」
徹「・・・」
○ 〃 中 (夜)
カウンターの裏から炎が立ち上がる。
○ 〃 表 (夜)
修一「まったく、そこがおまえらしいけどな」
徹の顔に照れ笑いが浮かぶ。
修一「みんなのところに帰ろう」
頷く徹。
その時、二人が向かおうとする離れから、大きな火が見える。
修一・徹「!」
一瞬自分の目を疑う二人。
建物から炎が出る。
修一「いくぞ!」
二人は離れに向かう。
入り口近くに、飛び出してくるクラスメートたち。
初音もその集団にいる。
修一が初音を抱きかかえる。
徹は、中に入っていく。
○ 〃 中 (夜)
徹が座敷を見ると、奥に麗美が倒れている。
徹は麗美を救出に向かう。
炎をくぐり抜け、麗美にたどり着く。
徹「レミ!」
麗美は、徹を認識して頷くが、意識を失っていく。
徹は、麗美を抱える。
修一が駆け込んでくる。
徹のポケットからキーホルダーが落ちる。
修一が二人にたどり着き、徹と一緒に麗美を抱え上げる。
少し離れたところに、キーホルダーが落ちているのに気づく徹。
徹「・・・」
三人で出口に向かう。
出口に近づく。
意識のない麗美。
必死の修一。
炎に包まれるキーホルダー。
徹「・・・」
×××
子どもの頃の麗美。
キーホルダーを子どもの徹に差し出す。
麗美「これ、徹にだけあげる(声を潜める)修一には内緒だからね」
本当にうれしそうな徹。
×××
ようやく建物の外に出る三人。
倒れ込む修一と麗美。
徹は二人の安全を確認すると、再び建物の中に消える。
他のクラスメートが、修一たちを助けに来る。
○ 〃 表 (夜)
修一に揺り起こされる麗美。
修一「レミ!」
麗美の意識が戻る。
背後では、離れが燃えている。
麗美「・・・修一?私、助かったの?」
頷く修一。
麗美「(気づいて)徹は?」
修一「徹もいるよ」
修一が振り返る。
そこには誰もいない。
修一「徹!」
麗美「徹・・・」
麗美の肩を抱く修一。
離れが炎に包まれて行く。
F.O
○お墓
徹の墓の前に佇む、麗美と修一。
修一「あのとき、徹は何か言わなかったか?」
麗美「・・・何も」
修一「徹は俺に言ったんだ」
麗美「?」
修一「おれは、レミがスキだって」
麗美「・・・」
麗美の目に涙があふれてくる。
F.O
○マンション 一室
冒頭の親子。
母親「その人は・・・(少し時間を置いて)お母さんのとても大好きな、生まれて初めて好きになった人だったの」
子供たちは照れくさそうに顔を見合わせる。
母は2人を見て、空をゆっくり見上げる。
FINの文字が空から降りてくる+
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