映画「砂の道」
第4章 青い樹々の項
健太と忍
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指宿高校の正門をクラスメートとくぐる健太。校庭には学生服と制服の高校生たち。
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忍の家で父毅がカラオケの採譜をしている、その横で会話。
忍
健太、学校が別だからって 浮気しないでね。したら私泣くから
健太
お前こそ。
忍
私は健太一筋。笑う
健太
俺は忍が泣くようなことはしない、絶対しない。
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ハイビスカスロードを自転車で走る健太、忍。
砂の道を歩く二人、笑顔。カメラ2人を回る。忍のアップ
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2年後
夜、机。受験勉強している健太。東京の父からの手紙を読んでいる。
「健太、がんばってるかな、私たちのせいで君には随分辛い思いをさせていると思う。君の母さんとはちょっとした心のすれ違いで別れてしまい、本当に申し訳ないと思っている。金銭面でも苦労させていると思う。何も親らしい事が出来ずここまで来てしまったが、なんとか大学だけは私が出して社会に送り出したい、どうかお願いだ。私に父親らしい事をさせて欲しい。」
健太、手紙を八重子に見せる。
八重子
なに、今頃言ってるの。冗談じゃない。ここまで頑張ってきたんだ。もう一踏ん張り、お母さんが頑張るから学費くらい、なんとかするよ。心配しないで。
健太、心配そうに八重子を見る。
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夜中布団の中で考えている八重子、起き出して、健太の手紙を読み返す。
若い頃の自分と健太の父と健太と3人で歩くシーン。目に涙
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翌朝、
八重子
健太、松崎さんに、あんたのお父さんに、お世話になりますって手紙を書きなさい。
健太
本当?お母さん、良いの?
八重子
良いよ、お父さんも、あなたに何かしてあげたいんでしょ。
驚き喜ぶ健太。
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忍
お姉ちゃん、毅くん、決まった。指宿駅の観光案内所。観光協会の職員になれた。
祥
しーちゃん、おめでとう。
忍
それでさ、ピアノだけど純さんが空いてる時間に時々、教えてもらうことにしたんだ。
祥
良かったねえ。お父さんも復活するかもねえ。
毅
そうだな、一緒にやるかあ、笑う。
しーちゃん、すまんな、お父さんが甲斐性がなくて、本当は音大に行きたかったんだよなあ。
忍
全然だよ。お父さん、大丈夫。それに家には上原毅って往年の名ギタリストだっているし。
毅
往年の、だもんなあ。力なく笑う。
全員微笑む。
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ホテル「燦」のラウンジ
Left alone.を弾いている純。
熱心に鍵盤を見つめている忍。
40
数ヶ月後 4月
知林ヶ島を見下ろす魚見岳に桜が咲いている。
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