映画「砂の道」第2章 若草の頃
6
隣のクラスからバタバタと入ってくる女の子、忍。南指宿中。
2年1組の表札
健太の机の前に後ろ向きに座り、理科のノートを広げる。
忍
健太あ、ここわかんない、教えて。
健太
ここか、ここはこうだろう、こうでこうだよ。
忍
ありがと、健太、あったまいい。ここ宿題でさ、わかんなかったんだよ。
健太 笑っている。
忍
なんでも言いな。俺、できることはなんでもするから。
忍 かぶりを振って、笑顔
今日家に行って良い?
健太
ああ、良いよ。
7
チャイムが鳴り、次の授業の先生が入ってくる。
先生
上原さん、中村君を大好きなのは良いけど自分のクラスで勉強しなさいね。
一同どっと笑う。
忍
はあい、頭をかきながら出て行く。
健太と忍、右手を小さく振り合いながら笑顔。
8
次の日
登校時
赤いレクサスが走ってくる、中に長い黒髪の少女と母らしい運転する女性。
侑
お母さん ここで良いよ。校門まで入ると恥ずかしいよ。
母加奈子
だってまず手続きやご挨拶やあるし。
侑
お母さんは事務室に行ってよ。私歩いていく。
車から降りて歩き始める侑。たちまち登校する中学生の注目の的になる。
猫背でヒョコヒョコ歩く健太の横を急ぎ足で通り過ぎていく侑。ちらっと長身の健太を見る侑。髪がなびく。
9
健太の教室。
先生と一緒に立っている侑。長身。
先生
伊藤侑さんはお父さんの仕事の都合で、半年だけお母さんのふるさと指宿で暮らすことになり、南中でみなさんと一緒に勉強します。仲良くね。
侑
伊藤侑です。短い間ですがどうぞよろしくお願いします。
拍手 こそこそ、話す男子、女子。
先生
伊藤さんは先月までアメリカにいたので英語が堪能だそうです。本場の英語に触れる良い機会ですね。
子供たち おおおおお。
じっと健太を見つめる侑。健太の前の席が空いている。
侑
先生あの席は空いてるんですか?
先生
ああ、空いてるよ。先月、転校した子の席だから。
侑
じゃあ私あそこに ( 言いながらつかつか、歩いて行き)、健太によろしくね、と言いながら座ってしまった。
健太 はあ。
うしろの祐二が健太の背中を突く。振り返った健太。ニヤニヤしている。祐二もニヤニヤ。
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