原作者からの手紙 その7
原作・鑑賞の手引き7「国立公園と砂の道(知林ヶ島の砂州:ちりんがじまのさす)」
しばらく架空の話が続きましたので、現代の本当のお話を申しあげます。
1 国立公園(こくりつこうえん)を守る人々について
指宿市の中の広い区域が、霧島屋久国立公園(きりしまやくこくりつこうえん)に含まれています。
「国立公園(こくりつこうえん)」とは、我が国を代表する自然(しぜん)の風景地(ふうけいち)を守るため、国によって指定された特別な場所のことです。
指宿市にこのような場所がたくさんあることはとても誇らしいことです。例えば、魚見岳、知林ヶ島、指宿温泉、池底、鏡池、山川湾、長崎鼻、開聞岳、大野岳、池田湖、鰻池、御門平断層崖など、主な観光地も含まれています。
これらの場所は、自然を大切に残していく必要があります。そのため、国では環境省(かんきょうしょう)という役所が、日本中の国立公園の管理をしています。また指宿市役所(いぶすきしやくしょ)や県庁(けんちょう)にも、そのお手伝いをする仕事があり、原作者も県庁でこの仕事をしました。
お隣の鹿児島市(かごしまし)に、環境省の「鹿児島自然保護官事務所(かごしましぜんほごかんじむしょ)」があります。そこには自然保護官(レンジャー)という人がいて、国立公園を守る仕事をしています。この環境省の仕事を、ボランティアでお手伝いする人達が「パークボランティア」です。原作者も20年以上前から「鹿児島地区パークボランティアの会」の一人です。また、「緑の少年団」や「子供エコクラブ」という子供達のボランティア活動もあります。
2 砂の道について
「砂の道」は、昔はあまり知られていませんでした。しかし、パークボランティアの人達が、休暇村(きゅうかむら)のある田良岬(たらみさき)で自然観察会(しぜんかんさつかい)をするようになってから知られたように思います。そして「青い鳥(あおいとり)」というテレビドラマの舞台となって、有名になりました。
知林ヶ島の名前の由来が、松林のこすれあう音が鈴の音に聞こえるからと語られ、ドラマの影響で「愛の島(あいのしま)」とも呼ばれ始め、とうとう「恋人同士で歩いて島に渡り、鈴の音を聞いたら結ばれる」といううわさまで立ち始めました。
※ このロマンチックな話を考え出した人は誰でしょう?意外と近くにいらっしゃるかも知れませんよ。
それ以来、この知林ヶ島の砂州を観光に来る人が増えています。最近では、砂の道を安全に楽しんでいただくために、砂州の入り口で注意事項をお伝えする方々の熱心な活動も始まりました。また、今年4月には、環境省の工事により知林ヶ島の遊歩道(ゆうほどう)が完成し、島の中を安全に一周することができるようになりました。
※ 島の遊歩道に、1か所だけ工事中についた動物の足跡を残した場所があります。ぜひ探してみてください。
たくさんの人に国立公園の自然に親しんでもらうことは大切です。しかし同時に、訪れる人達に鹿児島湾(かごしまわん)の入口にある島の自然とお付き合いする「マナー」もお知らせしなければなりません。映画「砂の道の向こう」がそのお役にたてるようになれば、原作者としてはとても嬉しいです。
3 指宿の女の子のみちびきについて
原作者が指宿海軍航空隊のことを知ったのは、約10年前の自然観察会でした。
休憩の散歩の時、指宿市内の小学生の女の子が、「いつもおじいちゃんとお参りするお墓があるの、あっちよ」と、慰霊碑(いれいひ)の前に連れて行ってくれました。原作者は、その場所に行って初めて、自然の中を過ぎた厳しい歴史を知ることができました。体がふるえました。いつかこのことを伝えなければならない…とも思いました。
もう二十歳ぐらいになられたでしょうね。あの時のお嬢さんに伝えたいです。
「あなたは、私の人生を変えました。この映画を見てください。あなたを育ててくださった指宿の街への恩返しです。」
※ ご愛読(?)ありがとうございました。ブログへの連載はこれを最後といたします。映画の完成をご期待下さい。 原作者:柳田一郎
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